ランス9 ヘルマン革命 - フルコンプしつつ難易度「めちゃくちゃ(x8)」でクリア。もうねばりゲー、ヘルマンの砦5ゲー
▼本作は昨年アリスソフトから発売された「パステルチャイム3」とシステム的に似通っている節がありまして、遊び始めた当初は周回プレイの作りで嫌気がさしたパステルチャイム3の悪夢がちらつき、日に1~2時間ほどプレイして止め、プレイして止めを繰り返していたんですが、1週間ほど経った後に途中から面白くなってきて、結局最後はフルコンプまで遊ばせてもらいました。
タイプとしてはアドベンチャーパートこと紙芝居シナリオの合間に戦闘が挿入されるシステムであり、プレイヤー任意の移動といったシステムが無いゲームなんですが、こういった作りだと少なからず窮屈な印象を受けてしまう。とは言っても今回はアリスソフト特有の軽いノリのギャグで笑わせてもらい、鬼畜王ランスやランス4.1と4.2以来となるランスシリーズであった私だけれどその世界観に惹きこまれていったので、退屈せずに最後までプレイできた。
長くなったので続きからどうぞ。

●ランスシリーズ完結を控えた9作目
このシリーズは他社のシナリオ重視な作品と比べてそれほどネタバレに敏感にならなくてもいい印象であり、ランスシリーズの5から8までがどういった顛末だったのかはネットで調べてある程度理解している状態からプレイしたんですが、それらを踏まえてプレイを続けるうちにどっぷりとのめり込んでいきました。
「鬼畜」「外道」「下衆」といった言葉で評価されてしまう主役のランス君ですが、改めて見てみると現実世界ではけして存在してはならないタイプの「男の子の憧れを体現している人物」だと感じられた。
確かにスケベで破天荒かつ奔放な性格ではあるけれど、引き取った女は命にかえても守り通す信念があり、本当に世界に害をなす危険分子とは徹底的にやりあう構えを見せ、そして何より戦いでは部類の強さを発揮する。女を好き放題にできる強い男でありつつ、どちらかと言うと本人の属性は悪だけれど、どうしようもなく悪い奴には立ち向かうという男が一度は夢見る鬼畜ファイターといったところでしょう。
●ルート分岐やシステム面
この点に関しては少しばかり残念な印象が拭えない。本作は最後の最後まで選択肢が一切無い一本道シナリオであり、それまでのイベント消化の進み具合によって最終章のみヒロインルートが現れる仕様となっていて、そこからの各ルートの規模はちょっと長めの1章分といった程度なのだ。
さらには初回プレイだと強制的に「正史ルート」に入る作りとなっていて、このタイプの18禁シナリオゲー及び遊べる18禁SLG&RPGでは定番となっている自分でルートを探して複数の話を楽しむ遊びがかなり簡略化されていた。
システムはアドベンチャーパートの合間に戦闘シーンが挿入されるタイプだと先述していますが、それとは別にいつでも戦える「自由戦闘」というものが用意されている。とは言ってもこの自由戦闘はほぼ1周目のみのバランス取りしかされていないようで、周回後はタイトルにも書いているが熟練ポイント稼ぎの為の「ヘルマンの砦5」くらいしかやるものがなくなってしまうのだ。
ボスっぽいものと何度でも再戦できるのだが、したところでご褒美のアイテムは一度目しか貰えないし、熟練ポイントの入手量もごく僅かとなっているから、好んで何度も再戦したくなるシステムではないだろう。
●各ヒロインルートの印象
正史ルートに加えてヒロイン7人分の最終章が存在しているわけですが、個人的な感想としては
・かなみルート
・ミラクルルート
次いで
・志津香子供ルート
・ピグルート
これが楽しめたルートでした。ハメ撮り写真からあそこまで発展してしまうかなみルートは、アリスソフトのランスシリーズでしか無理なのではないかと思えるほどぶっ飛んでいてほんと面白かった。
ミラクルルートは有名どころだと「ドラえもん」「こち亀」などでもあった話なのだが、こちらは何よりランスの器のでかさが素晴らしかった。小さい男なら失敗したミラクルを責めてしまうだろうが、ランスは責めるどころか50歳をこえた初老になってもあの状況を楽しみ、さらには30年間ミラクルと仲良くしていたことが馬鹿馬鹿しくも感慨深かった。ミラクルが既に若返りの薬を作っているというところが救いになるオチなのだが、最後のシーンのやる気満々な初老ランスが笑いを誘いつつ、50歳をこえてもミラクルを側においていたことが何よりランスのデカさを表しているだろう。それにしても、作中でミラクルが「女ランス」と揶揄されるシーンがあるのだが、この2人は似た者同士でありつつある意味ベストパートナーかもしれない。
志津香子供ルートは珍しく哀愁に満ちたラストだったことが印象深かったんですが、たとえIFルートのみだったとしても、姉妹でひと時でも分かり合えて良かったねと言葉をかけてあげたくなる最後だった。
ピグルートは全ルートの中でも一番めちゃくちゃかもしれない内容でしたが、革命そっちのけで人間とイカの戦いになっていき、最終戦の「重大な戦いの最中に交尾の相談とは・・・」とかいう台詞が妙に笑えた。
個人的に7人のヒロインの中でお気に入りとなったのは、プレイ前は容姿の良さと昔馴染みということから志津香だったけれど、プレイ後はミラクル・トーになった。えろいという意味ではなく奔放という意味で女版ランスとも言えるミラクルですが、戦いでは志津香とハンティと並んで魔法がかなり強いから使い勝手が良かったし、暗黒魔女ぶっているけど成りきれていないところなども面白かった。
そしてミラクルと言えば、人間界統一国家の王になることが目標であり、運命の女の一人であることが判明して入手した武器が電磁パルス、現代社会と見て取れるスチールホラーの存在を明らかにしたミラクル、12人の騎士ことトゥエルヴナイト、ランスシリーズは次回が完結で最後の魔物界になる。といった材料からして次回作でも登場してくるでしょうし、それらが実現したら面白いなと思えます。
●戦闘システム
前作から3D化したランスであり、今作ではさらに磨きが掛かった3Dモデリングになっているのでしょうけど、キャラクタの動きやモーションに関しては十分すぎるほど納得の出来でした。やはり3Dになるとキャラクタらに命が吹き込まれたかのように見えてくるので、2Dドット絵を否定するわけではないが3D化は時代に即した賢明な判断であったと感じます。
キャラクタのスキルや技などがかなり簡素な作りであるから、連動するように戦闘中の操作もシンプルなものになっているんですが、操作性に関しては文句の付けようがないほどよく出来ているでしょう。細かい注文をつけるなら、自動カーソル移動で「動作なしで使用」「演出なしで使用」などにカーソルが自動で移動するオプション設定があったら便利だったなと思えますが、これはかなり細かなポイントなので無視してもいいぐらいだ。
同社の昨年度作品「パステルチャイム3」は2D仕様のタクティカルRPGだったんですが、こちらは攻撃の度に右クリからメニューを呼び出したりと若干煩わしい作りであったけれど、それと比較すればクリック1発で移動そして攻撃、クリック2発で必殺技発動とランス9は相当プレイアビリティが高くなっています。
●キャラクタの育成
ライバル社の製品と比べると、物量的な意味でのやり込み度は浅いアリスソフトのゲームだと感じられるが、本作も装備は汎用品のみで種類が少なく、人物固有の武具などはほぼ固定のままであり、武具の個性とか実際の戦闘シーンで違いが感じられるものは無いと言っても過言ではない。
しかしながら、戦って熟練ポイントを稼いで、それらを体力や攻撃に振っていくというシンプルなシステムは一般的には受けがいいのではないかと思えますし、あまり深く考えずに戦って強くしてという工程に浸りたいときなどは印象が良くなるシステムであるだろう。
かくいう私も周回プレイ後は適当にスキップして何となくだらだらと戦って強化して、それらが楽にできたので8周目で最高難易度の「めちゃくちゃ」に挑んでクリアすることができた。とは言いつつもソーサラーな志津香とガード職の他面子などは明らかに感触が違いますから、そういったクラス面での個性はなかなか上手くつけられているだろう。

これぐらい強化した
一度のプレイで各ヒロインENDを複数見ないという個人的なルールを決めて、1周目はノーマル、2~4周目は「x2」、5~7周目は「x4」、8周目以降で難易度最高の「めちゃくちゃ(x8)」でプレイしたのだが、こういう言い方をするとあまり良くないのかもしれないけれど、数ヶ月前にプレイヤーを本気で殺しにかかってくる敵だらけのM&M10や、その後にこちらも本気で襲い掛かってくるAoW3などをプレイしていた身としては、かなり「ぬるい」ゲームバランスだと感じた。
このゲームバランスは恐らく広く浅く多くの人に楽しんでもらおうという配慮なのだろうけど、個人的な感触としては8周目の難易度「めちゃくちゃ」時が丁度いいぐらいの手ごたえと緊張感を保ったまま最後までプレイできたのだが、その時の感触でさえロシアゲーの「Easy」、米インディゲーの「Normal」ぐらいでしょう。
これだけゲームがぬるくなっている要因として、タイトルにも挙げている「ねばり」というステータス値があるんですが、これが異常なまでに有効な働きをしているからだ。育成前は全キャラそれなりに低い「ねばり」であるが、これが100を超えてくると100%の確率でやられた時に体力1で起き上がり、その戦闘内でのみだが「ねばり値」がマイナス10だけされる。言ってみれば150ほどあれば6回は確実に立ち上がってくることになるので、未プレイの人でもその有用さが理解できるのではないだろうか。
本作は魔法職が優遇されているから志津香やミラクルなどを優先的に育成すれば高火力を維持できるので、ねばりで堪えている間にどんな強敵でもあっさりと倒せてしまうのだ。
20人使えるキャラクタがいますが、その中でも特に使えた人物は
・1周目から難易度「x4」まで
ピッテン、志津香、ミラクル
・難易度「x4」そして「めちゃくちゃ」
志津香、ミラクル、ハンティ、リック
上掲画像のようにピッテンの魔抵が250もあるので、難易度「めちゃくちゃ」でヘルマンの砦5のスペルキャスターの魔法を食らっても1ダメージにしかならないのだが、一部シナリオ上の敵に魔法破壊値400ぐらいがいるので、それらの魔法攻撃ではある程度ダメージを受けてしまう。
もちろんピッテンはずっと使えるキャラのままなんだけれど、ハンティ、志津香、ミラクルの破壊値が700近くになったらやられる前に殆どの敵を倒すことができるので、そうなるとピッテンの出番が減ってきたという印象です。
リックは途中から重点的に鍛え始めたのだが、クリティカルが100を超えて受け流しと攻撃力も相当に高くなり、体力が大きく上がるアイテムと必殺技の回数+1も装備させ、ここまでくればまさに赤い死神のような活躍を見せてくれた。何より必殺技バイ・ラ・ウェイの効果範囲が広いから使い勝手がよく、乱戦向きであるところも大きな魅力であるだろう。
●防衛システム「浮要塞」に関して
本作の売りの一つである浮要塞ですが、一部のイベントで地上戦などで倒しきれなかった敵が浮要塞に侵入したことになり、浮要塞のコアを守りながらの防衛線になるのだけれど、浮要塞を使った強制的な戦闘はほんの一部のイベントで起こるだけであり、先述したようなぬるめのゲームバランスであるからこのシステム自体が活かしきれていない印象を受けた。
敵が強くて大軍であればあるほど浮要塞に入り込まれる確率が増す事になるのだが、多くの戦いではそのような事態に陥る前に敵を殲滅できるので、浮要塞が用無し状態のままゲームが進行していったのだ。
稼ぎ技として自由戦闘の「ヘルマンの砦5」などで、まず最初の戦闘は一人だけ出撃させてすぐにやられて、その後の浮要塞戦で最初の戦闘より多くのキャラクタを出撃させて通常時よりも熟練ポイントを多く稼がせるといった方法があり、そういったプレイでなければ浮要塞自体もその拡張パワーアップも殆ど使わずに何周もしてしまったのだ。もうちょっとこのシステムが活かされていたらさらに面白くなっていたことだろう。
●登場人物について。男がいい味を出している
18禁ゲームと言えばもちろん女性キャラがメインになるのだが、他社の作品に目を向けるとそれはもう女だらけのRPGがあったりするけれど、本作は特に30代の男性キャラが中心となって物語が展開していくんですが、某社のアクセサリーじゃらじゃらでなよっちい男のような輩は一切存在せず、けっこうムキムキとした連中ばかりが揃っている。
18禁ゲームに限らずカッコいいおじさんが良い仕事をする物語は個人的に好きになれる作風なんですが、本作はそういった私好みの作品でした。
●音楽について
この文章の冒頭に Youtube のランス9サントラ視聴ムービーの埋め込みを張り付けてありますが、先述した周回プレイの仕様で嫌気がさしたという「パステルチャイム3」と同じく、音楽に関しては申し分のない仕上がりでした。音楽に関してはゲーム以上に人それぞれ趣味嗜好の差が激しいものだと感じますが、そうだとしても本作の曲は誰が聞いても良いと思えるのではないだろうか。
特に好きになれたものは
・Monster Battle1
最初の戦闘で掛かる曲で間の抜けたような音色で始まる曲だけれど、ランス、かなみ、マリア、志津香にぴったりなちょっとお馬鹿っぽい曲調。
・Helman Battle2
戦闘でかかる頻度が高い曲ですが、何度も聞いてるうちに好きになった曲。
・ハニーのテーマ
これは昔からある曲ですが、今回は弾むようなイントロが特徴的で、とあるイベントで何度も聞くことになるからハニーというより「戦姫のテーマ」というイメージになってしまった。
・Running To The Straight(Arrange Ver.)
アリスソフトの過去作「ママトト」からきた曲のようですが、未来への希望を象徴するようなシャープで熱い曲。
余談になりますが、周回プレイの作りが微妙と酷評しているパステルチャイム3であるけれど、こちらも曲は素晴らしいものが揃っている。特に好きなのは「That time came」「Awaking of BIND」の2曲なんですが、この2曲はテーマ曲となっている「THE BIND SEEKER」のアレンジで非常にカッコいい。パステルチャイムは学園物であるから若い世代の話になるのは必然なのだろうけど、個人的には若返る前の「おじさんカイトス」がとてもカッコよく見えていただけに、出番が少しだけだったのが残念だった。挙げた2曲はおじさんカイトスのテーマ曲としてぴったり。
●総評
結論から言うと正直ちょっと物足りない印象を受ける内容だったんですが、物語が凄くいいという訳じゃないし、敵となるヘルマンの上層部はお馬鹿さんばかりときていたし、周回プレイのやり甲斐を見出せない作りであり、やり込み要素としては熟練ポイント上げ以外は他社の製品に大きく水をあけられている。
ルート分岐は最後のちょっとだけという寂しい作りであり、大きく分岐する話が複数存在していて思いもよらぬ展開に至るルートがあるなんて絵空事であるのだが、そうだとしても私としてはけっこう楽しめました。
久々のランスシリーズプレイだったわけですが、色々と探ってみるとこのシリーズの世界観が魅力的に見えてきたことが一つ。出だしでアリスソフト特有の軽いノリのギャグと書いていますが、芸人さんと同様に面白くない人物がそれっぽいことを言ってもただ寒いだけであるけれど、アリスソフトはそこらが板についているからほんとに笑えるポイントが沢山あったことが一つ。
長くプレイするうちに登場人物らに魅力を感じ始め、過去作や将来発売予定の「ランス10」そして「真鬼畜王」などにも興味が湧いてきた事も大きな理由であるし、何よりライト向けの周回プレイゲームとしては、手早い流しプレイが簡単に出来てそれほど苦労せずにフルコンプできたことも今回に限っては楽しめる要因となった。
本作のプレイ前にとあるライト向け作品を最後まできっちり遊んでいるんですが、確かに複雑で凝ったやり込みゲームを求める気持ちもあるのだけれど、それほど乗り気じゃないときはこのくらいの作りが丁度良いのではと感じた私でした。
もちろんこれは人それぞれ考え方が異なるはずですし、そもそも深いやり込みゲームを求める層や、普段の私のように「ゲームは挑戦するもの」、何よりハードを好むなんてプレイヤー層は明らかに少数派でしょうから。
そんな訳で楽しく最後まで遊べた「ランス9」でしたが、こうなってくると次回作である「ランス10」と、噂に聞く「真鬼畜王」が楽しみで仕方なくなってきました。ここ数年はアリスソフトよりも他社の18禁SLG及びRPGに魅力を感じていた私ですが、今回のプレイでその考えが大きく変化した次第。
今から10でどういう展開になるのか、自分の中で予想するのが楽しみの一つとなった。
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